航空貨物検査の「2025年問題」を突破するために
日本の航空保安を支える、ANAグループの総力戦

2024年末、日本の物流業界に大きな動きがありました。航空輸出貨物に対する国際ルールの変更により物流会社や航空貨物倉庫において「X線検査装置」によるセキュリティチェックが実質義務化されることになったのです。対象となる物流拠点や倉庫は100カ所以上、実施体制を整える期限は2025年内という、まさに「待ったなし」の状況。国内空港のX線検査装置で約7割の圧倒的なシェアを誇る全日空商事だからこそ、これは大きく活躍できる機会であると捉え、直ちにプロジェクトを始動しました。1台の納品に発注から2~3ヶ月かかり、通常であれば年に数台しか納品しない大型装置を、1年間で何十台もの納品をめざすという前例のない短期決戦。15年以上にわたる「X線検査装置メーカー(米国)の代理店」としての実績と、ANAグループが持つ輸送・技術・運用のリソースを投入した、総力戦の全貌に迫ります。

MEMBERS’ PROFILE

  • 越智 悠夢

    越智 悠夢

    アビエーション事業部
    セキュリティソリューションチーム
    政策科学部卒
    2023年キャリア入社

  • 吉田 若那

    吉田 若那

    アビエーション事業部
    セキュリティソリューションチーム
    国際関係学部卒
    2024年新卒入社

  • 西脇 紀之

    西脇 紀之

    アビエーション事業部
    セキュリティソリューションチーム
    スポーツ科学研究科卒
    2025年新卒入社

導入の経緯

「怒涛の年末年始」から始まった、
物流インフラを守るための短期決戦

越智 悠夢
越智

プロジェクトの幕開けは、2024年の大晦日まであと一週間という、まさに年の瀬のタイミングでした。航空貨物を取り扱う物流会社に対して、X線検査装置での検査を実質義務化するというニュースが業界を駆け抜けたのです。その直後から、既存のお客さまだけでなく、取引のなかった物流会社などからも問い合わせがひっきりなしに続きました。
年明け早々、チームを招集。国内空港に通算3,000台以上の納品実績を持ち、国内空港向けシェア7割を誇る自分たちが動かなければという強い思いを共有しました。
しかし、扱うのは、年に数台売れるかどうかという特殊な大型装置です。それを1年間で100台近くも全国各地に配備するのは従来の延長線上にあるやり方では不可能です。全日空商事、そしてANAグループの真価が問われる「挑戦」がここから始まりました。

インタビュー写真 インタビュー写真

成功への試行錯誤

大型装置の新たな知見を蓄積しながら、
これまでの商社の知恵を詰め込んだ
「虎の巻」での攻勢

越智 悠夢
越智

もともと私たちがメインで扱っていたのは、空港をお客さまとする保安検査用のセキュリティ装置でしたが、今回は製品や用途も異なりますし、販売先も物流各社となります。既存の営業ルートに加え、物流会社とつながりの深い販売店とも急ごしらえで連携を取り、全方位での営業体制を整えました。
当初は大型装置そのものについても深く専門知識があったわけではありませんでした。初期の商談ではメーカーさんが作成した動画を見せる程度にとどまり、私たち自身も製品知識を蓄えながら、時には、小型装置のデモで代替しお客さまにご説明を差し上げるなど、試行錯誤の連続でした。

吉田 若那
吉田

お客さまにとってもX線検査がはじめてのことなので、納期や価格だけでなく、検査方法や装置に関する非常に専門的な問い合わせなど、本当にいろんな質問をお受けしていました。そのたびに海外のメーカーに問い合わせていては非常に時間がかかることから、私たち自身が速やかに応えたいという思いで、質問への回答集のようなものを作りました。「虎の巻」のようなものですね。
これをチームで共有することで、専門的な質問にもその場で即答できるようになっていきました。お客さまをお待たせしないスピード感も、この短期決戦では重要でした。こうした小さな積み重ねがお客さまからの信頼にもつながり、最終的に1年で100近い成約につながったと自負しています。

インタビュー写真 インタビュー写真

ANAグループの総合力を活かした強み

輸送・搬入・設置までを一気通貫
ANAグループだから成し得た「週3台」の超高速配備

越智 悠夢
越智

このプロジェクトで最大の武器となったのは、ANAグループのネットワークを活用した「一気通貫」のスキームです。海外工場からお客さま先まで国際輸送・搬入を一貫して担うインターナショナル・カーゴ・サービス(当社グループ)、また機器の技術調整を担うANAスカイビルサービス(ANAグループ)、そして全体工程のマネジメントを担う私たちと、川上から川下までの工程をグループ内で完結させました。
通常、この巨大な装置は、海上コンテナで分解された状態で届くため、現場で20人ほどの作業員が3日間かけて組み上げる必要があります。1週間程度で1台設置するのが原則なのですが、全国3カ所で同時に設置を進めるという週もありました。
これを可能にしたのが、ANAグループ間の強い連携です。例えば羽田空港周辺での作業に、福岡や成田など他の拠点の技術者がサポートに駆けつけるといった体制で臨んだことも多くありました。空港で長年培ってきた、迅速かつ正確なオペレーションのノウハウがあったからこそ提供できた、私たちならではの価値だと考えています。

吉田 若那
吉田

ANAグループ内で実際に貨物検査業務を担うグループ会社の協力を得て、操作訓練を受けていただける体制も整備しました。単にマニュアルをお渡しするだけでなく、現場で、どう運用するのか、納品後の運用までイメージを広げたサービスを付加価値としてご提案できたことが大きな安心につなげられたと思っています。

インタビュー写真 インタビュー写真

ネットワークでつなぐ信頼

メーカーと一心同体で築いた製造体制
ANAのグループ力、空路を使った緊急トラブル対応

越智 悠夢
越智

装置の製造を行うマレーシアの工場は、世界各地からの需要を一手に引き受けています。そのため、通常の製造体制では、とてもでないですが今回の需要を引き受けるキャパシティはありません。一方、「日本国内でシェア1位を目指す」という目標を私たちは掲げており、メーカーに対して本プロジェクトに取り組むことの意義、マーケットのポテンシャルを説明し、何度も交渉を粘り強く行った結果、本プロジェクトにプライオリティを上げて取り組んでくれることを約束してくれました。結果的には通常製造納期から1ヶ月以上の納期短縮、また長く安定してお客さまにお使いいただけるよう、今後数年にわたるメーカーサポートの提供など特別な条件のオファーも引き出し、メーカーと一心同体でこのプロジェクトに臨む体制ができました。
メーカーとは3ヶ月以上オンラインでの交渉を続け、実際の製造状況を確かめるべく、マレーシア工場へも足を運びました。ライン上に並ぶ日本向けの装置を見た時、「まさに、この製品が納品されるんだ」とようやく実感し、安心感を得たのを今でも鮮明に覚えています。

西脇 紀之
西脇

全長10メートル以上の巨大な装置を、数ミリ単位で調整しながら組み上げていく作業現場では、トラブルも少なくありませんでした。
関西空港の近くのお客さまの現場では、あと少しで完了というところでトラブルが発生。現場のベテラン技術者が、想定しうる改善策を一つひとつ試しては再度トライするということを繰り返し、ようやく原因がわかったものの、その場にはない部品が必要なことがわかりました。直ちに社内の情報網を駆使し在庫を探したところ、羽田の倉庫に予備があることが分かり、すぐに羽田にいるスタッフと連携。その日の最終便に部品を載せてもらい、翌朝一番に関西空港で受け取って現場へ直行して修復することができました。無事に装置が動き出した時のお客さまの安堵の表情は忘れられません。私にとって、これこそが「チームで成し遂げる」ということなのだと、肌で感じた瞬間でした。

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次代へつなぐ一気通貫モデル

チームで築き上げた「一気通貫」モデルで、
ストレスフリーな保安環境を創造する

越智 悠夢
越智

装置を売るだけなら他社でもできます。けれども、輸送から設置、保守、そしてその後の操作訓練を一括で提供できたのは、ANAグループのネットワークを持つ全日空商事だからこそ。代理店の立場を超え、ユーザーに寄り添いつつ、グループ内で培った運用の知見を提供していくこともできます。このプロジェクトを通じて築き上げた「一気通貫」のモデルは、今後もチームの大きな強みになると確信しています。

吉田 若那
吉田

入社2年目で、ビッグプロジェクトに関われたことは、大きな財産になったと感じています。先日、何度もお問い合わせ対応をしたお客さまへの納品が完了し、「なんとかなりました、ありがとうございます」と感謝の言葉をいただいた時には、これまでの苦労が報われました。今後はさらに視野を広げ、お客さまの課題解決に向け、多様な商材を含めあらゆる要素を組み合わせた、付加価値の高い提案ができるようになりたいです。

西脇 紀之
西脇

今回のプロジェクトでは、先輩方の知識や決断力、現場での対応力に圧倒されるばかりでした。今はまだ大きなパズルの1ピースかもしれませんが、いつかは自分自身が中心となり、国を動かすような規模のプロジェクトを取りまとめられる人財として成長していきたいです。そのための第一歩として、本プロジェクトで得られた多くの経験を今後に活かしていきたいです。