お客さまのニーズをデジタルで把握し、
お客さま満足にタイムリーに貢献

全日空商事グループのリテール領域である「ANA FESTA」や「ANA DUTY FREE」の運営において、商品ラインナップや各商品配置などの売上向上に向けた施策は、これまで店長・スタッフの経験や勘に大きく依存をしていました。その結果、安定した店舗運営はできていたものの、個々の施策がどのように売上を左右しているのかを客観的に把握しにくい状況にありました。そこで、さらなる成長のため始動したのが、「ANA FESTA 店舗運営DX推進プロジェクト」です。私たちは、ビッグデータも活用しながら、売場運営のデジタル化への転換に挑みました。

MEMBERS’ PROFILE

  • 山内 史夫

    山内 史夫

    マーケティング&
    プロモーション室
    DXチーム チームリーダー
    経営学部卒
    2020年ANA FESTAより出向

  • 石津 圭子

    石津 圭子

    マーケティング&
    プロモーション室
    DXチーム
    生活科学科卒
    2006年キャリア入社

  • 伊藤 秀介

    伊藤 秀介

    マーケティング&
    プロモーション室
    DXチーム
    国際政治経済学部卒
    2017年新卒入社

導入の経緯

経験と勘に頼っていたANA FESTAの売場づくりを、
データ活用で、もっと効率的かつ効果的なものに

山内 史夫
山内

全日空商事グループのANA FESTAでは、これまで売場づくりの多くを店長や現場スタッフの経験と勘に頼ってきました。商品をどこに置くのが最適なのか、配置を変えたことで売上が上がったのか、キャンペーンの効果はあったのかなど、感覚的には理解できても、事実として検証できる仕組みがありませんでした。売上データを見るだけでは、お客さまが実際にどのように売場を歩いて、何が「購入の決め手」になっているのかを把握することができず、課題として捉えていました。
さらに、空港の民営化が進み、これまで航空会社系の売店が中心だった保安検査場内に、一般企業の店舗や飲食店、コンビニなどが参入するようになりました。以前のように「そこに店があるだけで来ていただける」時代ではなくなり、「またあのお店で買いたい」と選んでいただける魅力ある売場づくりが求められる状況となりました。
加えて、コロナ禍では旅客数が激減したことで売上への影響は非常に大きく、そのような状況下で「現場の勘」だけに頼るのは限界があると痛感しました。2022年度から、ANA FESTAとしても「データ活用によるマーケティング」を本格的に取り入れ、そこから全日空商事のマーケティングチームと連携しながら「店舗運営DX推進プロジェクト」が動き始めました。

インタビュー写真
インタビュー写真
上:羽田到着ロビーギフトショップ
下:ANA FESTA GO 羽田B1フロア店

具体的な取り組み

「カウントカメラ」によるお客さま動線の可視化、
課題が明確になり、精度の高い施策実行が可能に

伊藤 秀介
伊藤

ANA FESTAで、まず取り組んだのが「顧客動線の可視化」です。これまでは「空港全体の旅客数」と「店舗の売上」という数字だけがあり「お客さまが多かったから売上が良かった」ということしかわからず、どこに本質的な課題があるのかを深掘りすることができませんでした。そこで導入したのが「カウントカメラ」です。店の前の通行人数、入店人数、棚の前の立ち止まり、実際に商品を手に取ったかどうかといった、細かな行動がすべてデータとして取得できるようになりました。
数値化されることで「入店数は多いのに購入につながっていない」、逆に「売上は良いが実は入店数が少ない」など、これまで見えなかった事実が明確になってきました。そこから「棚のレイアウト改善」や「お客さまを呼び込むための施策の強化」など精度の高い対策を講じることが可能となりました。また、それらのデータを週単位で確認して、翌週には改善策を実施するというスピード感でPDCAを回す仕組みも構築し、担当者と現場が一体となって、毎週、スピーディーな対応で小さな改善を積み重ねています。

石津 圭子
石津

もうひとつの柱が「AIによる需要予測」です。発注業務は長く現場スタッフの経験に依存しており、欠品と廃棄のバランスが非常に難しい課題でした。コロナ禍では、ムダを出さないようにと廃棄を極端に減らす動きが強まり、その結果として“夕方にはお弁当が何も残っていない”状況が発生することもありました。そこで、AIに販売データや需要変動の要素を取り込み、最適な発注量を予測させることで、可能な限り廃棄ロスも機会損失も減らせるよう取り組んでいます。
さらに、顧客属性データの活用も始まりました。「どんなお客さまが、どの時間帯に、どの商品を購入しているか」が可視化され、より的確な品揃えや発注の判断を行える環境へと進化しつつあります。

インタビュー写真
インタビュー写真
店舗内の棚前立ち寄り率を数字で可視化。
感覚や経験値に頼らない環境づくりを進めました。

グループ力の強み

空港のお客さまの動きを把握している強みを活用、
全日空商事グループとして連携することで大きな成果

山内 史夫
山内

ANA FESTAの店舗からは日々多くの課題が上がってきます。「お弁当の欠品をなんとかしたい」「この商品の売れ行きが読めない」など、現場ならではのリアルな課題です。その課題に対して、私たち全日空商事が持つANAグループの顧客の属性や空港での動線といった、個人情報を除いたデータを活用しての解決法を提案できることがグループの大きな強みだと考えています。
もちろんANA FESTAは別会社であり、外部のデジタルマーケティング関連の会社へ依頼する選択肢もあります。しかし、「ANAのお客さまがどのように空港を利用しているか」「どの便にどんな属性の方が搭乗しているか」といった情報は、グループ内でなければ得られません。データの詳しさや活用できる範囲の広さは、私たちに大きなアドバンテージがあります。

伊藤 秀介
伊藤

様々な施策を導入する際には、全社向けの説明に加え、必要に応じて各店舗へ訪問し、説明も行っています。データの活用は、店舗の方々が使いこなして初めて価値が生まれるため、ツールの導入だけで終わらせず、しっかりと運用まで伴走する姿勢を何より大切にしています。

山内 史夫
山内

面白いのは、このプロジェクトを通じてグループ内の関係が深まり、以前より強い信頼関係が生まれたことですね。私はANA FESTAからの出向者として両社を知っていますが、全日空商事とANA FESTAのスタッフが、同じ思いで現場と向き合い、何度も売場の改善をともに行うなどの取り組みを通して、お互いの信頼が格段に高まったと思います。これはデータ以上の価値がある成果だと感じています。

インタビュー写真 インタビュー写真

成果と今後の展望

データを現場へ、現場からデータを
売場との共感が、新たな価値を生んでいきました

伊藤 秀介
伊藤

売場の改善や動線の最適化の取り組みを積み重ねる中で、売上が顕著に改善した店舗もあります。いくつかの施策も同時に行っていますので「カウントカメラ」だけの成果とは判断しづらいのですが、導入以前と比較して、売上が最大で110%ほどに伸びた店舗もありました。
ただ、それ以上に大きかったのは、現場の意識の変化です。最初は「データを踏まえるとこのようにしたほうが良いのでは」と、基本的にはプロジェクトチーム側からの一方的な提案のみでしたが、今では、店舗側から「このデータを見て課題を見つけたので、こう改善してみたい」というような声が挙がるようになりました。リアルな現場を知っている方々だからこそのアイデアもあり、取り組みがどんどん活性化しています。

山内 史夫
山内

DX推進の本質は、ツールを入れることではなく、それを使いこなせる組織になることだと思います。現場が自走できるレベルまでノウハウを標準化し、誰が担当しても同じ品質で運営できるようになることが大切であり、それが長期的に見ても最も効果のある成果だと思います。

石津 圭子
石津

店舗の皆さんと一緒に成果を目指していく空気ができたことも大きな成果だと思います。これからもANA FESTAやANA DUTY FREEがより活性化することで、空港で働く人、利用する人の双方に、より良い価値を提供できるよう、取り組みを拡大していきたいです。

挑戦を知る プロジェクト2