全日空商事が描く宇宙産業の未来図
商社の知見を活かした「宇宙ビジネス」への挑戦

ANAグループの長期戦略構想の裏表紙に、『次は、宇宙へ。』というメッセージが記載されたのが2015年。ANAグループでは、その翌年にプロジェクトを立ち上げ、将来の宇宙ビジネスの可能性を探り始めました。その中で全日空商事は、これまでに商社として積み上げた実績・知見・ネットワークが宇宙産業でも有効だと確信し、宇宙を新たな成長領域として位置づけました。2025年には『宇宙ビジネス開発室』を立ち上げ、宇宙産業の根幹である人工衛星分野をターゲットに事業開発を本格化させています。国内外企業とのパートナーシップを構築し、商社として宇宙産業の成長を牽引するべく取り組んでいます。

MEMBERS’ PROFILE

  • 植木 智也

    植木 智也

    宇宙ビジネス開発室
    宇宙ビジネス開発チーム
    チームリーダー
    外国語学部卒
    2007年新卒入社

  • 倉科 瑛

    倉科 瑛

    宇宙ビジネス開発室(経済産業省製造産業局宇宙産業課 出向中)
    経済学部卒
    2022年キャリア入社

  • 築地 健斗

    築地 健斗

    宇宙ビジネス開発室
    宇宙ビジネス開発チーム
    経済学部卒
    2020年新卒入社

宇宙ビジネスに商社の力を

研究開発中心だった宇宙産業に
商社の『ビジネス視点』を持ち込む

植木 智也
植木

『宇宙ビジネス』と聞くと、エンジニアの方々が人工衛星やロケットを開発しているイメージを持たれるかもしれませんが、私たちが取り組んでいるのは、『商社としての宇宙ビジネス』です。具体的には、海外顧客やサプライヤーの開拓、貿易実務や為替ヘッジ、契約管理などサプライチェーンマネジメントが主な領域です。
これまで日本の宇宙産業は研究開発を中心に、政府・JAXAのミッションを支え、実現してきました。他方、サービス開発や市場創出のような、新たなビジネス構築という商売面は発展途上にあります。私たちはこの状態を、日本の航空産業の20~30年前の姿に似ていると捉えています。航空産業の中で全日空商事は、まさにそのようなところから産業発展を支え、大きく事業領域を拡張してきました。

築地 健斗
築地

例えば、人工衛星を開発する企業が部品を海外から調達する際、エンジニアの方々がサプライヤー開拓から部品選定、契約手続きや複雑な仕組みの為替対応まで担っているのが実情です。こういった海外取引は、全日空商事が航空産業だけでなく、ライフスタイルや食品、半導体などの産業分野で提供しているサプライチェーンマネジメントそのものであり、私たちの得意分野です。
この強みをどう宇宙産業に展開するか、商社機能をどう価値に変えていくか。日々試行錯誤していますが、『商社としての宇宙ビジネス』のチャンスは非常に大きいと考えています。

インタビュー写真
インタビュー写真
種子島宇宙センター訪問時に撮影した「H-IIロケット」の模型

稼げる仕組みをどう作るか

世界で拡大する衛星需要をつかむため
パートナーとの事業提携でビジネスを加速させています

倉科 瑛
倉科

宇宙産業に商社の視点を持ち込む。その挑戦先が人工衛星分野です。近年、多数の小型衛星を一つのシステムとして低軌道で運用する衛星コンステレーションの展開が進み、通信サービスの高速化や高頻度の観測データ提供が可能になっています。海外では、SpaceX社のStarlinkに代表されるように、低遅延かつ広域な通信サービスが実用化されています。日本ではスタートアップを中心に地球観測ビジネスが拡大しています。
このように、人工衛星は宇宙産業の根幹であり、衛星コンステレーションの拡大を背景に、その製造数や打上げ機数は世界的に急増しています。この分野に注力することで、早期にビジネスを成立させ、事業拡大できると考えています。

植木 智也
植木

日本の宇宙産業がさらに拡大するためには、宇宙に取り組む企業が『稼げる仕組み』を作ることが大切だと考えています。特に、規模の大きい欧米市場に対して日本の宇宙技術・製品を輸出させるようなビジネスモデルの構築が、日本の宇宙産業に必要だと考えています。
そのために当社では、出資や事業提携を通じてスタートアップ企業と連携、そこに当社の海外拠点やネットワークを組み合わせることで、個社単独ではなく、面で世界に事業展開することに取り組んでいます。この2年間で、次世代の衛星エンジンや光通信技術など、世界的に競争力を持つ国内外6社と戦略的パートナーシップを構築しました。このような出資とビジネスモデル開発を組み合わせることができるのは、商社ならではと考えています。

築地 健斗
築地

私は現在、出資先スタートアップの一社とともに、部品のグローバルな調達スキームの構築や、米国全日空商事と連携した北米市場における販売戦略の推進に注力しています。
出資先企業のオフィスに机を借りて、そこで仕事をしながら、海外取引に関わる“よろず窓口”として、何でも相談してもらい、一緒に悩みながら取引を進めています。そうすることで、その企業で働く一人ひとりと人間関係を築けています。こういった仕事の進め方ができるのは、当社が商社として長年培ってきた調達ネットワークや、貿易やロジスティクスに関わる知見があるからこそだと感じています。
さらに、最近では活動領域をタイやインドをはじめとするアジア地域にも広げています。当社パートナー企業の技術・製品の営業活動や、独自技術を持つアジアのスタートアップ発掘を進めています。

インタビュー写真
インタビュー写真
米国オーランドで行われた国際宇宙カンファレンスの展示ブース

宇宙ビジネスの土台を築く

国との関わりの中で築いた知見とネットワークで
宇宙産業に新風を吹き込む

倉科 瑛
倉科

ビジネスを進める上で直面するのが、宇宙産業特有の課題です。官需が起点で、高い信頼性が最優先される『一品物』の世界。その結果、秘匿性が高く情報がオープンになりづらい。例えば、衛星製造では多数の部品・コンポーネントを海外から輸入していますが、その内容は開示されにくいです。そのため、他の産業のようにスムーズに商社の強みを活かした提案を行うことが難しく、効率化やコスト削減が進みにくい状況にあります。
しかし、2030年頃には日本でも衛星コンステレーションが本格化し、量産フェーズへ移行すると見込まれています。その時には効率的な調達、ファイナンス、リスクマネジメントといった商社の総合的な事業支援力が絶対に必要になる。だからこそ、今の段階から総合的な事業サポートや仕組みづくりを進め、その土台を整えておくことが重要であると考えています。

植木 智也
植木

その土台づくりの一環として、私は宇宙ビジネス開発室に着任前の3年間、内閣府宇宙開発戦略推進事務局に出向していました。基幹ロケットや宇宙港に関わる政策立案、日米間での条約交渉など濃密な業務に携わり、この時に築いたネットワークや知見を今、活かしています。
築地も外務省への出向経験者。そして、現在は倉科が経済産業省宇宙産業課へ出向し、まさに"ど真ん中"の政策に従事してくれています。官(政府機関)と民(ビジネス)、その両方の考え方を理解し、橋渡しができる。この希少な経験こそが、宇宙ビジネスを切り拓くための強力な武器だと考えています。

倉科 瑛
倉科

宇宙産業では、主役が官から民へと移行する流れが進んでおり、民間企業の参入や事業化が拡大しています。こうした環境変化の中で、産業全体の成長に貢献できることに大きなやりがいを感じています。

インタビュー写真
インタビュー写真
宇宙スタートアップ企業の展示ブース

日本の宇宙ビジネスを、世界へ

いま動くことで、
日本の宇宙産業は世界で戦える

倉科 瑛
倉科

宇宙は、地上に新しい選択肢を与えてくれる分野とも言えます。例えば、軌道上を活用したP2P(ポイント・トゥ・ポイント)が実現すれば、地球上の二地点間を短時間で結ぶことが可能となり、移動の在り方が変わります。また、宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)が実現すれば、宇宙空間から太陽光エネルギーをマイクロ波またはレーザー光に変換して地球に伝送し、電力として利用することができるため、エネルギー問題解決の可能性があるとして期待されています。これらの技術は、未来の社会において人々の生活の利便性や豊かさを高めることにつながります。
現在、宇宙産業は、新たな市場や産業構造が形成され、発展している段階です。事業領域が広がり、多様な関係者が関わる中で、産業全体をつなぎ、事業として形にしていく役割の重要性が高まっています。商社として、これまで様々な分野で積み上げてきた知見を活かし、宇宙産業の成長を現実のビジネスとして社会に根付かせていく一助となれるよう、今後も挑戦を続けていきたいと考えています。

築地 健斗
築地

私たちの取り組みは、当社のみならず、宇宙業界全体にとっても前例のない領域への挑戦が数多くあります。確実な答えがない中で、どうすれば成功に近づけるかを模索する日々は、まさに道なき道を進むような感覚です。しかし、この「未知の領域」に挑み、自らの手で正解を創り出すことがビジネスの醍醐味であり、私自身大きなやりがいを感じています。
商社という立場から産業構造の変革に挑み、パートナー各社と一緒に試行錯誤を重ね、持続可能なビジネスを作っていく。泥臭くもクリエイティブな歩みこそが、宇宙を遠い夢から日常のインフラに変え、まだ見ぬ未来を切り拓く大きな価値になると信じています。

植木 智也
植木

私たちが産業構造の変革に挑むのは、その先にこそ、日本が世界市場で競争力を発揮するための飛躍があると確信しているからです。数ある日本の産業の中でも、宇宙産業は、未だグローバル市場への本格的な進出を果たしておらず、ポテンシャルがある数少ない分野の一つです。
トレーディングや貿易の実務、ファイナンス、グローバルネットワークなど、全日空商事グループが長年積み上げた知見は宇宙ビジネスと極めて高い親和性を有しています。今動けば、世界の宇宙産業の中でも、全日空商事としてのポジショニングを築けます。それは当社の挑戦の新たな一歩につながると信じています。

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